映画「プリデスティネーション」をつまらないと感じた理由
この記事には映画「プリデスティネーション」のネタバレが大いに含まれているので、まずは映画をご覧ください。
タイムトラベルものに衝撃の展開は付き物だし、それが分かり切ってると楽しめないよねというお話。
個人的にあまり楽しめなかったので、その点を書いていきます。
登場人物
- 主人公(バーテン)
- ジョン(バーの客)
- ジェーン
- ジェーンの元恋人
- ジェーンの娘
- 誘拐犯
- 爆弾魔
- ロバートソン
分かり易すぎる伏線
冒頭、主人公が爆弾を解除しようとして大やけどを負います。
- タイムトラベルものである
- 導入で主人公の顔を見せない演出
- 顔が見えないまま主人公は爆発で大やけどを負い、その後の手術で顔と声が変わる
この時点で
- 主人公は登場人物の誰かと同一人物である
- 火傷を負った時に近づいてきた人物は未来の主人公
という事が容易に想像できます。
「あの時の謎の人物は実はタイムトラベルしてきた主人公だったのか!」という展開はタイムトラベルものでは超あるあるだからです。
逆にそういうことをしないタイムトラベル物語は存在するのでしょうか?
タイムトラベルSFに少しでも触れてきた人ならこの展開は(したくなくとも)予想してしまうでしょう。
観客は「今後出てくるいずれかの登場人物と主人公は同一人物である」という想像をして次の展開を待つことになります。
謎の人物の長すぎる自分語り(ゆえに)
どうやらこの物語は「時空警察官である主人公が歴史的な爆弾魔を追う話」のようです。
火傷を治療して新しい姿となった主人公は過去に行き、何故かバーテンダーとなって客(ジョン)と長話を始めます。
主人公はジョンと接触する為にバーテンダーとなっている模様。
その内にその客は自らの過去を語り始めるのですが、これが非常に長い。
まず主人公がジョンに接触する目的が明かされていません。
こいつが爆弾魔なのか?それともそこに繋がるキーマンなのか?今後バディとなる仲間を勧誘するのか?
その辺を察することが出来る演出が無いまま、さも重要人物であることを示すような長い長い生い立ちエピソード。
当然ある疑問が浮かびます。
「こいつが過去の主人公なのでは?」
冒頭のシーンから大して時間が経っていない為、なおさらそういう発想になってしまいます。
そしてジョンによる追撃。
「赤ん坊を盗んだ犯人は私やお前のような細い顔立ちだった」
前述のようなことを考えている我々にそんな事を言ってしまったら
主人公=ジョン(ジェーン)=誘拐犯
としか考えられないでしょうが。
「でもジョン(ジェーン)と主人公は顔の骨格とか違うように見えるけどなあ」とかちょっと思っていた淡い反論さえも打ち砕かれました。
理解不能なジョンの行動
その後、ジョンは主人公に「お前の人生を壊した男に会わせてやる」と言われ半信半疑のまま半ば無理やりタイムトラベルをさせられます。
そこでジェーン時代に自分をもてあそんで捨てた男を殺す為、その男との出会いのシーンへ乱入…
したのですが、男を探しているとジェーンと肩がぶつかり当時の会話の流れに。
なんとあの男は他ならぬジョン自身だったのです!
え?
確かにそういう「実は自分自身でした」という展開はこのジャンルにおいてはあるあるだけど、この後二人は肉体関係をもって子供さえ出来るんだよね?
じゃあこの人、自分自身と愛し合ったの?マジで?
ジェーンはそれと知らないからまだしも、ジョンはジェーンが過去の自分だともちろん分かっており、その後肉体関係を持ち、図らずも身籠ることを知っています。そして殺したいほど恨むことも。
そんな状況で過去と同じ道を歩むでしょうか?
悲しい過去を無くすためにタイムトラベルしたのに自分からそれを再現するのも、過去の自分と恋愛関係、肉体関係になるのも全く理解できません。
「運命からは逃れられないのだ」とか言われれば「そうですか」としか言えませんが、納得は出来ません。
衝撃の展開による「なるほどそうだったのか!」という気持ちよさよりも、生理的な気持ち悪さの方が勝ってしまいます。
せめて避妊しろよ馬鹿もん。
ロバートソンからのお知らせ
一方主人公は、ジョンとジェーンがいちゃついているのを放置して爆弾魔の犯行を阻止すべくタイムトラベルをします。
そこで爆弾魔と格闘になるのですが、絶妙にその男の顔が見えません。
これは…そういう事でしょう。
その後爆弾魔に逃げられた主人公が爆音を聞きそちらへ向かうと、大やけどを負い倒れた男が。
冒頭のシーンに繋がります。
やはりというか当然というかこのシーンで近づいてきた謎の男は主人公でした。
その後主人公は再びタイムトラベルを行います。
何かを考えている様子の主人公にロバートソン(なんか時空警察のえらい感じのおじさん)が話しかけます。
- 命令にないタイムトラベルは重罪である
- やり過ぎると精神病や認知症のリスクが高まる
- 主人公はタイムパラドクスから生まれた「過去と繋がりをもたない唯一の存在」である
- 辛いのは分かるが未来への種まきは忘れるな
などと何やら重要そうなことを述べて去っていきました。
ジョン(ジェーン)の出生の秘密
そして主人公はジェーンの娘(ジェーン)を攫います。
これは想像通りでしたが、そういえばその後どうするんだろう?育てるの?
などとのんきに考えていると、そのまま孤児院の扉の前へ。
ああー…そういう事ですか。
ジェーンとジョン(同一人物)の娘ジェーン(同一人物)って事ね…
すげえ話だな。
確かにジェーンが昔から人と違ったり優秀だったりといのも血が濃くなった影響と考えれば自然なのかな?
でも父親も母親も同一人物だとしても同じ人間が生まれるわけではないでしょうに。
これでは遺伝ではなくクローンですが、ちょっと理解が追いつきません。
ジョン、時空警察になる
その後、ジョンとジェーンのラブラブ時代へ飛んだ主人公はジョンを呼びつけます。
ジョンはなにやらご立腹の様子。
銃を突き付けて「こうなることを知っていて騙しやがったな!」と他責思考です。
主人公は「こうなる運命だった。そろそろ俺の正体にも気づいてるだろう?」と意味深な事を言ってジョンを時空警察へ招待。
そして自分は最後のタイムトラベルを行い、そこで生活しつつ爆弾魔を追うつもりのようです。
種明かしと決着
ロバートソンから貰った手がかりにより爆弾魔の行きつけのコインランドリーを突き止め、そこへ向かう主人公。
店内にいたのは年老いた自分でした。
主人公=爆弾魔
爆弾魔となった自分は語ります。
「爆破によって失われた人数よりも助かった人数の方がはるかに多い。局の指示で動いていた時より多くの人命を救った。お前はどうせ俺になる、ロバートソンの意のままだ。」
これらは本当の事なのでしょうか。
「おれを殺してはダメだ。おれを愛するんだ。」
しかし主人公は彼を射殺します。
最後に酒をあおりシャツがはだけた主人公の身体には性転換手術と帝王切開の際のキズが残っていました。
主人公=ジョン(ジェーン)=ジェーン(娘)=爆弾魔
つまり主人公が追っていた爆弾魔は未来の主人公であり、バーの客ジョン(かつてのジェーン)は過去の主人公であり、そのジョン(ジェーン)の元カレはバーを出た後のジョン本人(主人公)であり、ジョン(主人公)とジェーン(主人公)の娘ジェーンは主人公だったというわけです。うんうん。
残された謎
- なぜ主人公は爆弾魔になったのか?
- 最後のタイムトラベルだったはずなのになぜ爆弾魔は老いていたのか?
- ロバートソンは爆弾魔について何か知っていたのか?
この辺の謎は説明されずに終わってしまいました。
なぜ爆弾魔となった主人公は老いていたのか?
最後の使用後は「機能停止」となるはずのタイムマシン。それはつまりそれ以降の主人公は年代に沿った歳の取り方をするという事です。
しかしコインランドリーで出会った自分自身は老いていた。
これはタイムマシンが「機能停止」から「エラー」になっていたのが答えのようです。
おそらく機能停止になっておらずにまだ使えたタイムマシンを主人公は個人利用していたのでしょう。
何度もタイムトラベルを繰り返し、最後に爆破の犯行前日にまた戻ってきた。だから老いていた。
ロバートソンは爆弾魔について何か知っていたのか?
最後にロバートソンと別れた際に彼は「爆弾魔がこの組織を成長させた」と言っています。
そして爆弾魔の「ロバートソンの意のまま」という言葉。
ロバートソンが必要悪として爆弾魔を作り上げたという事でしょうか。
なぜ主人公は爆弾魔となったのか?
あれだけ憎んでいた爆弾魔になってしまった主人公。
爆弾魔を射殺するまでは断固として「俺はお前にはならない!」と言っています。
しかしおそらくタイムトラベルの影響で徐々に認知症や精神病に蝕まれていくのでしょう。
そしてそこをロバートソンに利用されて爆弾魔に仕立て上げられていった。という事でしょうか。
最後のカットで主人公は、タイムマシンを見つめながら過去のジョンに対して「お前がひどく恋しい」というモノローグで終わります。
あるいは彼に再び会うために爆弾魔として追われることを選んだのでしょうか。
果たして彼は運命から逃れられるのでしょうか?
そしてそれは正しい事なのでしょうか?
まとめ
なんだか驚かせる仕組みの為にストーリーを作った感じがして、しかもその仕組みがバレバレなので純粋に楽しめなかったのが残念でなりません。
主人公の両性具有設定もバーで話した日の朝に精子が出るようになったのも、自分自身と愛し合った末に懐妊するというドラマチックな展開の為に作られたキャラクターのように強く感じました。
もちろんストーリーの為にキャラクターが作られるのは当然のことですが、それが露骨過ぎると愛着は湧きません。
また、映画の半分近くを占めるジョン(ジェーン)の生い立ち部分も、キャラクターに感情移入できなかったので楽しめませんでした。
前半は感情に乏しく目的に一直線な人間だったのに、途中から急に普通のヒロイン的な弱弱しいキャラクターになった理由も理解できず、その後の自分との恋愛でさらに分からなくなり宇宙人を見ている気持ちでした。
タイムトラベルものなのでどんでん返しに膝を打つような思いをしたかったですが、必要最低限のキャラクターとストーリーでカッチリ作り過ぎているため、類似作品を見たことのある人なら展開がおのずと読めてしまいます。
逆に言えば僕もこれが初めて触れるタイムトラベルものだったら、その綺麗な物語構造にとても興奮して楽しめたのかもしれません。
人生において、こういう最後にどんでん返しがある「伏線が凄い」物語を楽しめる本数は決まっているのかもしれません。



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