三体(小説)1巻の感想

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小説「三体」を今更読み始めた

数年前から「すげえ面白いSF小説が出た!」と話題になっていた「三体」、やっと読みました(1巻)。

SFで「三体」なので、三体問題の話かな?とは思っていましたが、読んでみると想像した話とはやや違いました。

僕はてっきり「三体問題の証明に腐心した科学者の人生をドラマチックに描いた物語」みたいな現実的でややお堅いSFかと思っていましたが、もっと壮大で読みやすいエンタメ作品でした。

今回は「三体」1巻を読んだ感想を面白い点と気になる点に分けて綴ります。

やや気になる点の方が多いのでその点はご注意下さい。

ネタバレ有りです。

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「三体」の面白い所

  • 読者への配慮
  • エンタメ性
  • 三体世界との違い
  • 予測を裏切る展開

読者への配慮

「三体」は中国の物語なので登場人物は中国名であり日本人としては結構覚えにくいのですが、栞が登場人物の名簿になっていたり、ページが変わったら必ずカタカナの呼び名が差し込まれていたりと配慮がなされています。

特に後者は、ページが変わって一番最初に名前が出た時にカタカナの呼び名(例:汪淼(ワンミャオ))が入っているので「これなんて読むんだっけ…」となった時(よくある)に必ずそのページ内に答えがあるため非常にありがたく、いたく感動しました。

エンタメ性

「三体」という硬いタイトルからはイメージできるものとは違ったエンタメ性があり、最初の文化大革命の部分こそ読みづらいですが、そこを超えると非常に楽しいドラマチックな物語が展開されます。

特にゴーストカウントダウンや宇宙背景放射の変調、これらの説明しがたい現象がどのように引き起こされているのかというミステリー要素もあり、徐々に明かされていく真相にこの先どんな現象が起こるのか気になってページをめくる手が止まりません。

「三体」の1巻は500ページ超ですが、長く感じることはなく読み進める事が出来ました。

三体世界の特徴

ゲーム「三体」を通して明かされる三体世界が興味深いものとなっています。

太陽の予測不可能な「乱紀」と文明の発展が出来る恵みの「恒紀」、その環境に適応するよう進化した三体人の「脱水」「再水化」などの地球とは異なる部分が読んでいて面白い。

予測を裏切る展開

本作は文潔と汪淼の2人の物語が交互になっているのでどちらにも感情移入しているのですが、それゆえに文潔が世界三体協会のリーダーであることが衝撃的でした。

激動の時代を生き抜き、今回の事件で娘を失い、近所の子供たちに優しい眼差しを投げかけていた文潔。

その人がまさか人類への攻撃を行う過激な集団を率いる立場だったとは。

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「三体」の気になる点

  • 文革の章のとっつきにくさ
  • 登場人物の属性が分かりにくい
  • 絶望感への感情移入が難しい
  • VRゲーム「三体」の仕組みの分かりにくさ
  • 汪淼が三体問題に気付くのが遅い
  • 三体文明の滅び具合が分からない
  • 智子プロジェクトの実現可能性
  • 謎の種明かしの微妙さ

文革のとっつきにくさ

やはり読み始める際の障壁となっているのは最初の章の堅苦しさではないでしょうか。

文潔の決断にとって必要不可欠な描写ではありますが、この部分の読みにくさのせいで断念する人がいるであろうことは勿体ないの一言に尽きます。

登場人物の属性が分かりにくい

これはもしかしたら中国文学の作法なのかもしれませんが、初登場人物の説明が足らないように感じます。

初登場したシーンで文潔は「少女」という記述のみで外見や正確な年齢の説明がない為、僕は勝手に小学生くらいだと思っていたのですが、どうやらこの時点で大学生以上であることが後々(なんとなく)分かります。

またもう一人の主人公である汪淼も、登場した際の性別や年齢の描写が無い為イメージがなかなか出来ませんでした。

口調から男かな?とは思えるのですが、日本人の読者は中国名で性別を判断出来ないのでそのあたりの説明があると余計な思考をせずに済むのでありがたい所です。

ほぼすべての人物の年齢描写が無く進行するのは中国文学ならではなのか、この作者の手癖なのか。

僕はいまだに汪淼の年代が分かりません。

絶望感への感情移入が難しい

物語序盤の不可思議な現象、写真や網膜に映るカウントダウンや粒子加速器のおかしな実験結果などで作中の科学者がみんな絶望して、自殺者まで出るのがちょっと感情移入できません。

もちろん今まで積み上げてきた物理学の歴史が無価値なものだと知れば、その探求者である科学者は愕然とするし少なからず絶望感を感じてしまうのは分かりますが、逆に言えば新たな歴史的発見であるわけで。

人類の安定的な発展や、これまで少しずつ真理を解き明かしてきた先人たちの苦労を考えれば暗い気持ちになるのも理解できますが、科学者であればそれと同時に探求心や知的好奇心がくすぐられるのではないでしょうか?

VRゲーム「三体」のシステムの分かりにくさ

「三体」はオンラインゲームなので複数人が同時にプレイしているようですが、汪淼のプレイでは他のプレイヤーは見当たらず、NPCとの会話しかありません。

つまりストーリーの進行は別々で、プレイヤー同士が触れ合うことは無いのかな?

でもそれだとオンラインである意味がいまいち分かりません。

三体問題であることを突き止めた汪淼は史強の部下に「汪教授の名前は『三体』で有名ですよ」と言われます(文庫版312ページ)。

という事は他のプレイヤーの進行度が見えるようになっているのでしょうか?

「三体」はゲーム内でプレイヤー同士のやり取りが出来るのでしょうか?

汪淼はそれらを行っている様子はありません。

うーん、分からん。

しかしその後、汪淼は3回目のプレイで出会ったノイマンを「NPCではなく人間のプレイヤー、しかも中国人」と決めつけます(文庫版324ページ)。

じゃあ他のプレイヤーも居るのかな?

でも他のプレイヤーも存在する世界ならなぜ、汪淼が勝手にゲーム内時間を進める事が出来るのでしょうか?

ノイマンはコンピューターの存在を知らないようなそぶりを何度か見せています。

「三体」はwebサイトにアクセスしてプレイするオンラインゲームなので、コンピューターの存在を知らない人間がプレイすることはないでしょう。どういうことだ!?

そしてその後、オフ会にてプレイヤーの進行度はそれぞれ違うことが明かされます(文庫版352ページ)。

じゃあノイマンの下りは何だったんだよ…

汪淼が三体問題に気付くのが遅い

汪淼が三体世界の太陽の運行が三体問題であることに気づくのが妙に遅いんですよね。

2回の文明の滅亡を経験してやっと三体問題について言及するのですが、それまでは全く触れないのが不自然に感じます。

その後の描写的に汪淼は三体問題についてかなりの知識を元々持っていたようですが、それならばなぜ最初の文明からその可能性を考えないのか。

それだけの知識があれば、太陽の運行が不規則で、ゲームタイトルが「三体(3body)」なんだからすぐにそれと気付いて当然ですが、何故か気づいている様子を全く見せずに2度の滅亡を見送ります。

もちろん様子を見る為にしばらくは言わずにおいたというなら分かりますが、物語が汪淼の視点で描かれている以上、「思い当たる仮説はあるが、もう少し様子を見てから結論を出しても良いだろう」などとなんとなく気付いている様子くらいは地の文で書かれていた方が自然に思います。

三体文明の滅び具合が分からない

また、三体文明の歴史がどうなっているのかも良く分からない。

三体文明は滅びて1から始まることを繰り返していますが、どの程度の滅び具合なのでしょうか?

文明の痕跡は次世代に貢献できる程度には残るのか?三体人の遺伝子は残るのか?

その辺りの詳しい説明がないのがモヤモヤします。

全体的に説明不足なんですよね。

謎の種明かしの微妙さ

序盤の不可思議な現象の数々、このシーンはワクワクしたしどんな種明かしがあるんだろうとミステリー的な楽しみがあって気になっていましたが、その種明かしがちょっと納得し難いものだったのは残念です。

スーパーコンピューターになった陽子が網膜を高エネルギー状態で網膜を走り回ってカウントダウンを描画していたという事ですが、うーん。

光速とはいえさすがに毎秒8桁の数字を描画するには対象に付きっきりである必要があると思うのですが、汪淼の最初のカウントダウンは1200(時):00(分):00(秒)、50日間も汪淼に付きっきりで大丈夫なのでしょうか?

それに上記のような仕組みであれば、眼下に診察に行った際に汪淼の眼を除いたはずの医師にカウントダウンが見えなかったのも不思議です。

また粒子加速器の衝突実験への介入も、智子自身が衝突してルートを操作するというのも力業過ぎて笑いました。

この種明かしパートは非常に楽しみにしていただけに、もうちょっと説得力のある説明が聞きたかったというのが正直な感想です。

また智子は二次元に展開した際に地球を覆うほどのサイズになり、それによって背景放射を明滅させましたが、それならその機能で太陽光を遮って疑似的に氷河期を起こすとかもっと直接的なやり方はいくらでもあった気がします。

科学者のやる気をへし折るなどと回りくどいやり方をするより、そういった直接的で壊滅的な方法を取ったほうが地球人が三体文明に対抗する科学力を手に入れるリスクは少ないと思うんですけどね。

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まとめ

なんだか文句が多くなってしまいましたが、全体的には楽しい作品だと思います。

「SFの歴史に残る大傑作」みたいな前評判から、僕が「作り込まれた世界観」みたいなものを期待しすぎた部分が多く、それゆえ細かい部分が気になってしまったようです。

この作品はその辺の科学考証や作り込まれた設定を楽しむものではなく、細かいことは気にせずもっと気軽に読むのが正しい楽しみ方なのかもしれません。

あるいは、まだ3部作のうち1作しか読んでいないので納得がいかないだけで全部読み切れば疑問はすべて解決するのかもしれません。

なんにせよ、続きを読むのが楽しみな作品です。

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